診療・各部門
2021年4月1日より星ヶ丘医療センター消化器内視鏡センターが新しくなりました
2015年より稼動しておりました当院内視鏡センターは、地域の先生方の力強いご支援、北河内地区の患者さんのご支持を得て発展してまいりました。開設当初は年間3000件台であった内視鏡件数は、検査・治療共に飛躍的に増加し、現在ではおよそ7000件に到達しています。
しかしながら時が経過し、内視鏡診療はより高度になってまいりました。その向上に追いつくだけのハード面(内視鏡設備・システム)とソフト面(内視鏡医、技師、看護師)の充実が不可欠となりました。
そこで2021年4月1日より最新の機器・設備を整え、高度な内視鏡診療を行い得るエキスパートの内視鏡専門医とそれを支える内視鏡技師・看護師が充実された、新しい消化器内視鏡センターが稼働いたしました。
以下その内容についてわかりやすく解説いたします。
現在当院では、内視鏡を用いた治療を幅広く行っています。その内容をわかりやすく解説いたします。
消化器内視鏡は、本来その言葉通り、消化管の内腔を覗くために開発された道具ですが、その進歩は急速で、ビデオカメラと同じ方式の電子内視鏡となって20数年、より細く、より軟らかく、より高画質となった電子内視鏡では、こちらも高画質化され、大きくなった内視鏡モニターを複数の人間が同時に視ることが可能となり、複雑な協調操作が可能となりました。。
したがって、現在では、"視る"つまり診断するという当初の目的を越えて、これを用いて病気を治療するという重要な役割が加わりました。その目的とするところは、"最小侵襲治療"=minimally invasive therapy; MITです。苦痛が少なく、入院期間が短く、術後の機能障害を残さないなど、種々の特色がありますが、治療効果は同等で、外科手術が不要となることがその最大のメリットです。
代表的なものに、内視鏡的粘膜切除術(EMR)と内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が挙げられます。主な治療対象は早期胃癌、食道表在癌、早期大腸癌、大腸ポリープです。文字どおり内視鏡で腫瘍を切除する手技で、手元から約1m先で行なう、いわばマジックハンドによる手術です。
特にESDは高度な技術を要しますが、粘膜癌であればサイズを問わず、ほとんどの早期癌を治療することが可能となります。これら治療は、例えば早期胃癌では胃が丸ごと残る、つまり機能障害がほとんどなく、術後の痛みがきわめて少なく、入院期間も約1週間と短いのが特長です。
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)のシェーマ
ESDの実際
胆石が胆管へ落下して詰まったり、胆管に腫瘍ができると、肝臓から腸管への胆汁の流れが悪くなり、黄疸が出ます。放置すると、急性胆管炎を起こし死亡することもあります。こういった場合にも、内視鏡で胆管孔を切開して石を取り出したり、石や腫瘍で閉塞した胆管にチューブを通して黄疸をとるなどの処置が、かなりの割合で内視鏡で行えるようになっています。この手技をERCP関連手技と呼びます。この手技は胆膵疾患の診断・治療には極めて重要です。
ERCPのシェーマ
内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP :endoscopic retrograde cholangiopancreatography)とは特殊な内視鏡を口から挿入して十二指腸まで進めて胆管・膵管の出口(乳頭)から細いチューブを挿入して造影剤を注入し検査をしたり、結石を除去したり、ステントを挿入したりする検査・治療です。
急性胆管炎は、大多数は胆管結石の十二指腸乳頭部嵌頓によって発症します。重症胆管炎では、すみやかに適切な胆道ドレナージが行われない限り致命率は83%以上に達します。
ERCP関連手技の実際
超音波内視鏡下生検とは、超音波内視鏡という先端から超音波の出る特殊な内視鏡を用いて、以前ならば開腹手術でしか診断のつけようのなかった膵臓の腫瘍や腹腔のリンパ節を、胃や十二指腸を通じておなかをあけることなく採取する方法です。2日程度の入院で苦痛なく行うことができます。
超音波内視鏡下瘻孔形成術は、超音波内視鏡を使って、胃や十二指腸を通じて胆嚢や胆管、膿瘍に新たな道を作り貯留した液体を消化管内に排出する新しい治療法です。この手技は非常に高度な技術を要しますが、当院ではこの手技に精通する日本胆道学会認定指導医がしっかりと必要性を見極めた上で積極的に行っています。
EUS関連手技(超音波内視鏡下瘻孔形成術)の実際
ウィルス性肝炎やアルコール性肝障害が進行して起こることの多い肝硬変では、硬くなった肝臓を迂回する血流が増加し、食道に静脈瘤が発生することがよくあります。これが破裂すると、出血によって肝不全に陥ったり、大量出血により生命に関わることもあります。
現在は、定期的な内視鏡検査で静脈瘤を発見すると、破裂を防ぐために内視鏡的静脈瘤結紫術(EVL)と呼ばれる方法で、静脈瘤に輪ゴムをかけてくくり、潰してしまう治療が比較的簡便に行えるようになっています。初回治療でも約1週間の入院で済み、苦痛もきわめて軽微です。不幸にして破裂して吐血した場合でも、大部分が同じ方法で治療可能です。
ヘリコバクター・ビロリ菌を退治する除菌療法の普及により、昨今、胃十二指腸潰瘍からの大量出血は一昔前に比べて激減しています。また、強力無比の酸分泌抑制剤の登場により、潰瘍の大部分が内服治療で治るようになりました。しかし、現在もなお、血管が切れて大量出血を伴う潰瘍は一定割合存在し、最近では、脳梗塞や心筋梗塞予防のための抗血栓薬の普及、あるいは、消炎鎮痛剤内服による潰瘍からの出血もまれではありません。
こういった病態における吐下血では、緊急内視鏡による内視鏡的止血が必要です。治療は、現在は、外科手術時と同様、出血している血管を鉗子で把持して高周波凝固で止める方法、アルゴンガスに乗せた常流で局所を焼き固めるAPCを主体に、特殊な薬剤を切れた血管部分に注射したり血管をステンレスのクリップで挟む方法も、部位により選択します。現在、吐血や大量下血を伴う出血の約97%が内視鏡的に止血可能です。
炎症や腫瘍、手術による繋ぎ目など種々の場合に消化管が狭くなり、通りが悪くなることがあります。このような場合にも、内視鏡から出した風船により狭い部分を拡張したり、ステントと呼ばれる金属の筒を通して、通りを良くすることができます。
脳卒中や神経の病気、高齢者では、食事や飲み物をうまく飲み込めず、これらが誤って肺に入り、誤嚥性肺炎を繰り返すことがあります。このような場合でも、内視鏡でお腹の表面から胃の中へのトンネルを造り、食道を通さずに栄養剤や薬剤を胃の中へ入れることができます。経口摂取可能となれば、抜去する事もできます。
以上が、現在当院で行っている主な内視鏡治療の概要です。
特に①~③の診療は日進月歩の勢いで高度化・洗練化されており、この手技のクオリティー、年間件数でその内視鏡センターの実力がわかります。2021年4月からの消化器内視鏡センター稼動より当院ESDのクオリティー・件数は飛躍的に上昇し、必ずや地域の患者様の消化器診療のお役に立てるものと確信しております。
しかし、すべての場合に内視鏡治療ができるわけではありません。例えば、日本人に多い胃癌でも、進んでしまったものでは、手術が必要となります。早期発見・早期治療というのは、よくいわれることですが、症状のない状態での定期検査が非常に大切です。私ども消化器内視鏡センターでは、40代以降の方には1~2年に1回の胃カメラ検査、50代以降で経験のない方には大腸の内視鏡検査をお勧めしています。検査のご希望があれば、お気軽に消化器内科外来あるいは、かかりつけの先生にご相談ください。
内視鏡センター長 徳原満雄
- 医学博士
- 日本内科学会認定内科医/総合内科専門医/指導医
- 日本消化器内視鏡学会認定専門医/指導医
- 日本膵臓学会認定指導医
- 日本肝臓学会認定肝臓専門医/暫定指導医
- 日本胆道学会認定指導医
- 日本消化器病学会認定消化器病専門医/指導医
- 日本がん治療認定医機構がん治療認定医
- 日本腹部救急医学会認定腹部救急認定医
- 日本消化器学会近畿支部評議員
- 日本消化器内視鏡学会近畿支部評議員・学術評議員
- 日本胆道学会評議員
- 難病指定医
- 緩和ケア研修会修了
診療実績
検査・治療 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 |
---|---|---|---|---|---|
上部消化管内視鏡 | 5,027 | 4,419 | 5,007 | 5,311 | 5,216 |
下部消化管内視鏡 | 1,201 | 1,087 | 1,147 | 991 | 915 |
ESD(食道・胃・大腸) | 16 | 22 | 71 | 88 | 96 |
大腸EMR(コールドポリペクトミー含む) | 270 | 243 | 309 | 472 | 578 |
ERCP | 45 | 70 | 104 | 70 | 82 |
PEG造設・交換 | 66 | 77 | 60 | 46 | |
超音波内視鏡(EUS) | 41 | 31 | 49 | 28 | 31 |
超音波内視鏡関連手技(超音波内視鏡下生検・ろう孔形成術等) | 7 | 5 | 19 | ||
合計 | 6,600 | 5,938 | 6,771 | 7,025 | 6,983 |