診療・各部門
当科の特色|代表的な疾患、特徴的な疾患に対する診療方針|当科の診療実績|地域の先生方へ|当科の診療担当医
当科の特色
- 当院は日本泌尿器科学会専門医教育施設です。
- 当院は日本透析医学会認定施設で、緊急透析・透析導入・維持透析を行っています。
代表的な疾患、特徴的な疾患に対する診療方針
前立腺肥大症
男性が60歳を過ぎると排尿に関するいろいろな症状があらわれ始めますが、これらの多くが前立腺肥大症という病気に関係しています。前立腺肥大症による症状は「尿が出にくい」「尿が細い」「尿の切れが悪い」というものから、「尿が近い」「トイレに間に合わずに漏れそうになる」あるいは「夜中に何回もトイレにいく」など多彩です。
前立腺肥大症が疑われる患者さんについては、排尿症状を詳しく尋ねた上で、実際の尿の勢いや残尿量を調べる検査、あるいは前立腺の大きさを調べる検査を行って、この病気の重症度を調べます。これらの検査はいずれも苦痛を伴うものではありません。また、必要であれば血液検査で前立腺がんの可能性がないかどうかを調べます。
前立腺肥大症に対してはよく効く薬が開発されているので、多くの場合はまず薬による治療から開始します。薬で症状がよくならない場合や、尿の出かたが極端に悪い場合には手術による治療をお勧めします。最近は手術の効果を予め予測できる検査法があり、患者さんの状態によってはこの検査の結果を見た上で手術をするべきかどうかを判断することもあります。前立腺肥大症に対する手術は、特殊な例を除いて全て内視鏡的に行われ、お腹を切開することはありません。手術に必要な入院期間は10日間程度です。
夜間頻尿
最近、「夜中に何度もトイレに起きることがつらい」と訴えて、泌尿器科を受診される患者さんが多くなっています。このような症状を夜間頻尿と呼びます。比較的高齢の男性が多く、前立腺肥大症の症状ではないかと心配されて受診される場合が多いのですが、最近の研究結果では、実は夜間頻尿の多くは前立腺肥大症と直接関係ない場合が多いことが解かってきました。その証拠に、元来前立腺のない女性においても、年齢とともに夜間頻尿で悩む方が多くなります。
夜間頻尿の原因としては膀胱や前立腺などの排尿に関係した臓器の異常よりも、心臓、肺、腎臓などの異常や糖尿病、さらには加齢にともなう睡眠障害などが関係している場合が多いのです。最近話題になっている睡眠時無呼吸症候群も夜間頻尿の原因となることがあります。夜間頻尿で悩む患者さんのほとんどが、まず泌尿器科を受診されます。当科では前立腺肥大症などの泌尿器科疾患がないかどうかを調べるとともに、他の原因で夜間頻尿を来していないかどうかも調べ、必要に応じて循環器、呼吸器、あるいは糖尿病の専門医師に患者さんをご紹介しています。
女性の尿失禁(尿もれ)や骨盤内臓器脱
女性の尿失禁には様々な原因があり、原因によって治療法も異なってきます。また、膣に違和感を感じる原因となる骨盤内臓器脱を合併していることも少なくありません。このような病気については、適切な検査を行うことで正しく診断することができます。
尿失禁の治療は原因によって薬による治療と手術による治療に分かれます。骨盤内臓器脱に対しては、原則的に手術療法をお勧めしています。尿失禁に対する手術も骨盤内臓器脱に対する手術も患者さんの負担が少ない方法を採用しており、尿失禁の手術は5日間程度、骨盤内臓器脱の手術は10日間程度の入院で行うことができます。
神経疾患による排尿障害(神経因性膀胱)
当科には、脊髄損傷、脳卒中、二分脊椎などの各種神経疾患による排尿障害(神経因性膀胱)で悩む患者さんに対して、1970年代から積極的に治療を行ってきた歴史があります。この豊富な治療経験と知識に基づいた専門性の高い診療を行っており、現在でも近畿各地はもとより、四国九州からも患者さんが受診されます。それぞれの患者さんの持つ神経因性膀胱の状態だけでなく家族構成や仕事の有無など、さまざまな条件を総合的に考慮して、治療方針を決定しています。
神経疾患による排便障害
神経因性膀胱の患者さんの中には、排便のコントロールがうまくいかずに困っている方が少なくありません。ところが、このような排便の問題について専門的な診療を行っている医療機関がたいへん少ないのが現状です。当科では、主に二分脊椎や脊髄損傷の患者さんについて、排便管理についても積極的に取り組んでいます。
小児の尿失禁(尿もれ)や夜尿症(おねしょ)
小児の尿失禁や夜尿症の中には、重大な病気が隠れていることがあります。症状について詳しく尋ねることから始めて、なるべく患児に負担の少ない検査を選択しつつ原因を調べます。尿失禁に対しては多くの場合薬による治療を行いますが、ときには手術が必要となる場合もあります。
間質性膀胱炎
間質性膀胱炎とは、通常の膀胱炎と異なり、膀胱に尿がたまるにつれて下腹や膣あるいは肛門周辺に激痛が生じる特殊な病気で、患者さんの苦痛は並大抵ではありません。膀胱に尿がたまることによる痛みのために、極端に排尿回数が多くなることが、この病気の特徴的な症状です。また、最近まではこの病気についての医師の知識も不十分であったため、間質性膀胱炎の患者さんの多くがいくつもの病院を受診した経験を持ち、それでもなお診断がつかないために、精神的にも苦しんでいる方も少なくありませんでした。
間質性膀胱炎を根治させることのできる治療法は、残念ながらまだ見つかっていませんが、麻酔をした上で膀胱内に多量の水を注入して膀胱を拡張させる「膀胱水圧拡張術」が現時点で最も効果のある治療法です。当院は「膀胱水圧拡張術」を行うことのできる、大阪府下でも数少ない病院のひとつです。「膀胱水圧拡張術」に必要な入院期間は約5日間です。
尿路結石
尿路結石の多くは、突然に起こる背中から横腹にかけての激痛(疝痛発作)をきっかけとして見つかります。疝痛発作に引き続いて高い熱がでる場合は、腎盂腎炎という腎臓の細菌感染を起こしている可能性があります。この場合は早期に適切な対応を行わないと、敗血症という命を奪いかねない病気に進行することがあります。このような患者さんに対しては、緊急の処置が必要になります。
痛みが一段落したならば、原因となっている結石に対する治療を行います。小さな結石で自然に流れてしまう可能性が高いと判断された場合は、そのまま様子をみることにしますが、いつまでたっても流れない場合や、ある程度以上の大きさの結石に対しては積極的な治療を考えます。多くの場合は体外衝撃波結石破砕術(ESWL)という方法が第一選択となります。ESWLは特殊な装置を用いて結石に衝撃波を当てて破砕する方法で、体内に内視鏡を挿入したりメスを用いることがなく、他の治療法に比べると患者さんにやさしい方法です。ESWLで結石が破砕されなかったり、衝撃波が届きにくい場所にある結石に対しては、内視鏡を用いた治療法が選択されます。内視鏡を用いた治療には尿道から尿管内に内視鏡を挿入する方法と、背中から直接腎臓内に内視鏡を挿入する方法の二通りがあり、それぞれに長所短所があります。結石の場所や大きさ、さらには患者さんの状態によっては、従来からある開腹手術が最もふさわしいと考えられる場合もあります。
このように尿路結石に対する治療法にはたくさんの種類があるので、個々の患者さんについて最もふさわしい方法を選択することが重要です。それぞれの方法の特徴を生かした治療戦略を立てて、患者さんの要望に応えるように心がけています。
前立腺がん
前立腺がんは最近急速に増えている病気で、PSAというたんぱく質を測定する血液検査で、前立腺がんの可能性の有無がある程度わかります。PSAが異常に高い値を示す患者さんについては、前立腺の組織を少しだけ採取する前立腺針生検を積極的にお勧めし、早期癌の発見に努めています。前立腺針生検は1泊2日の入院で行い、当科では年間約130人の患者さんが受けておられ、癌の発見率は約30%です。
生検の結果がんが発見された場合、早期のものについては手術により根治できる可能性が高いことから手術療法をお勧めしていますが、患者さんの年齢やご希望によっては放射線療法やホルモン療法も行っています。また新しい治療法である密封小線源永久挿入治療については、施行可能な施設を紹介しています。いずれにしても、十分な時間をかけた説明の上で患者さんやご家族にもよく考えていただき、治療法を決定しています。根治手術を受けられる場合の入院期間は15~20日間程度です。
膀胱がん
膀胱がんの多くは、血尿がでることから発見されます。血尿はすぐにおさまることが多いのですが、次に再び血尿があらわれたときには病気が進んでいることも少なくありません。一度でも血尿がでたら、泌尿器科を受診することをお勧めします。
膀胱がん全体の約70%は、内視鏡を用いて行う手術で切除できます。この場合の入院期間は10日~2週間です。一方で、まれにがんが進行した状態で見つかることがあります。進行がんに対しては開腹での手術療法・抗がん薬による治療・放射線療法やこれらを組み合わせた治療が必要となります。手術で膀胱を摘出したあとの排尿方法にはいくつかの方法がありますが、病気の状態、患者さんの体力、患者さんのご希望などを総合的に考えて、患者さんに最も適した方法をお勧めしています。
腎がん
腎がんは自覚症状のない段階で、腹部エコー検査などで偶然発見されることの多い病気です。腎がんに対する最も効果的な治療法は手術による摘出です。以前は開腹手術でがんのある腎臓をすべて摘出していましたが、最近ではお腹を大きく切らない腹腔鏡下手術を第一選択としています。また、がんの状態によっては腎臓をすべて取るのではなく、がんの部分だけを切除する方法も採り入れています。手術ができない患者さんや、がんが再発した患者さんに対しては、免疫療法や新しい抗がん薬(分子標的薬)を用いた治療を行っています。
外来通院での抗がん剤治療
がん患者さんの中には、薬による治療(抗がん剤治療)が必要となる方も少なくありません。以前は抗がん剤治療というと副作用の強い恐ろしい治療というイメージでしたが、最近では抗がん剤自体の改良や様々な副作用に対する良い治療法が開発さたため、患者さんの負担もかなり軽減されています。その結果として、以前は入院することが必要であった抗がん剤治療を外来通院の形で受けていただくことも可能となっています。当院には外来で抗がん剤治療を受けていただくための専用スペースである「外来化学療法室」が備わっており、泌尿器科のがん患者さんの中にも、これを利用して入院することなく抗がん剤治療を受けている方が少なくありません。
緩和医療
現代の発達した医療技術を持ってしても全てのがんを根治させることは不可能であり、残念なことに、がんによる肉体的な痛みや精神的な苦痛と闘わざるを得なくなる患者さんが存在することも事実です。当科では様々な治療手段を駆使して患者さんとともにがんと闘うだけでなく、同時に早い段階から患者さんの苦痛を和らげることを心がけています。当院にはこのような治療の専門家集団である緩和ケアチームがあり、私たちも積極的に緩和ケアチームと協力して患者さんの闘病生活を支援しています。
当科の診療実績
疾患名 | 件数 | 平均在院日数 |
前立腺の悪性腫瘍(疑いを含む) | 115 | 6.0 |
腎結石及び尿管結石 | 99 | 8.2 |
膀胱の悪性新生物 | 92 | 9.8 |
閉塞性尿路疾患及び逆流性尿路疾患 | 31 | 6.8 |
前立腺肥大(症) | 23 | 11.2 |
急性尿細管間質性腎炎 | 21 | 18.6 |
前立腺の炎症性疾患 | 21 | 9.2 |
腎盂を除く腎の悪性新生物 | 15 | 12.7 |
尿細管間質性腎炎、急性または慢性と明示されないもの | 14 | 19.6 |
膀胱炎 | 14 | 9.9 |
腎盂の悪性新生物 | 13 | 14.0 |
下部尿路結石 | 12 | 5.3 |
COVID-19 | 11 | 17.9 |
神経因性膀胱(機能障害),他に分類されないもの | 8 | 6.6 |
慢性腎臓病 | 7 | 21.1 |
疾患名 | 術式 | 件数 | |
悪性腫瘍 | 腎癌 | 腹腔鏡下腎摘除術、部分切除術 | 12 |
腎盂尿管癌 | 腹腔鏡下腎尿管全摘除術 | 3 | |
尿管鏡下腫瘍切除術、生検 | 5 | ||
膀胱癌 | 根治的膀胱全摘除術 | 1 | |
経尿道的膀胱腫瘍切除術 | 80 | ||
前立腺癌 | 前立腺生検 | 86 | |
精巣腫瘍 | 高位精巣摘除術 | 1 | |
その他 | 2 | ||
計 | 190 | ||
尿路結石症 | 経尿道的腎尿管砕石術 | 78 | |
経尿道的膀胱砕石術 | 13 | ||
体外衝撃波結石破砕術 | 60 | ||
計 | 151 | ||
その他良性疾患 | 経尿道的前立腺切除術、レーザー蒸散術 | 26 | |
間質性膀胱炎手術 | 6 | ||
動静脈シャント造設術 | 6 | ||
精索捻転手術 | 5 | ||
腹腔鏡下仙骨膣固定術(LSC)、尿失禁手術 | 4 | ||
経皮的腎瘻造設術、膀胱瘻造設術 | 4 | ||
包皮環状切除術(完全包茎) | 4 | ||
陰嚢水腫/精液瘤 | 3 | ||
内尿道切開術 | 2 | ||
ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法 | 2 | ||
その他 | 7 | ||
計 | 69 |
検査名 | 件数 |
膀胱尿道鏡検査 | 614 |
超音波断層法 | 3,407 |
逆行性腎盂造影 | 70 |
順行性腎盂造影 | 9 |
尿管皮膚瘻造影 | 66 |
膀胱造影 | 38 |
合 計 | 4,204 |
検査名 | 件数 |
尿流測定 | 266 |
膀胱内圧測定(PFSを含む) | 117 |
排尿時膀胱尿道撮影 | 21 |
ビデオウロダイナミクス | 61 |
合 計 | 465 |
地域の先生方へ
- あらゆる泌尿器科疾患に対応します。
男性不妊症や性機能障害などの一部の特殊な疾患を除いて、ほとんどの泌尿器科疾患に対して、診断と治療を行っています。 - 泌尿器科救急診療を行っています。
泌尿器科の疾患には尿路結石による疝痛発作や前立腺肥大症患者の尿閉など、救急対応が必要なものも少なくありません。それらの中には血尿による膀胱タンポナーデ、外傷による尿道損傷や精巣破裂、精策捻転、尿管結石嵌頓による閉塞性腎盂腎炎など、緊急に専門的な対応をしないと予後が不良な疾患も多く含まれます。一方で、泌尿器科専門医が常勤している医療機関はまだ少なく、受診希望・紹介希望の症例に対しては、できるかぎり対応することを当科のモットーとしていますので、該当する症例が発生しましたなら、ご遠慮なく一度病院へ連絡をしてみて下さい。
外来診療担当表
当科の診療担当医
部長 松本 吉弘 Yoshihiro Matsumoto |
---|
【専門・認定等】
|
医員 大森 千尋 Chihiro Omori |
【専門・認定等】
|
医員 宮崎 和喜 Kazuki Miyazaki |
【専門・認定等】
|
医員 守安 雅弘 Masahiro Moriyasu |
【専門・認定等】
|
医員(非常勤) 百瀬 均 Hitoshi Momose |