大腸がんの解説

大腸がんについて大腸がんの症状大腸がんの診断進行度(病期)大腸がんの治療方法抗がん剤の使用について入院期間

大腸がんについて

大腸がんの増加傾向が著しく、食生活、特に欧米型の動物性たんぱく質や脂肪の取りすぎが原因ではないかといわれています。大腸ポリープや潰瘍性大腸炎にかかった人、なかなか治らない痔瘻、血縁者に若くして大腸がんになった人がいる人などは、大腸がんになりやすいようです。大腸ポリープは、大腸ファイバー検査によりたくさん見つかります。大部分は良性ですが、一部のポリープはがんになることがあります。

大腸がんの症状

大腸は長さ約2m、盲腸から始まり上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸、肛門へと至ります。盲腸からS状結腸までを結腸と呼び、直腸と区別しています。便は盲腸付近で水のようですが、S状結腸や直腸で水分が吸収され硬くなります。

大腸がんに特徴的な症状はありませんが、その約3/4はS状結腸・直腸で発生する(図1)ため血便、便が細くなる、残便感など排便に関した症状が多くみられます。がんが大きくなり大腸がつまり腸閉塞になったり、肝臓などへの転移が先に発見されたりすることもあります。

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大腸がんの診断

目に見えない程度の血便を調べる便潜血検査(ヒトヘモグロビン法)は、スクリーニング検査として優れていますが、大腸がんの他大腸ポリープ、憩室、痔などいろいろな病気で陽性を示します。

血液検査の腫瘍マーカー(CEAやCA19-9)の異常で見つかることもあります。大腸がんの確定診断には、その部位と性状を知るために注腸検査と大腸ファイバーが欠かせません。浸潤の程度や転移の有無などを超音波やCT、ときにはMRIやPETなどで調べます。

しかし、すでに腸閉塞になっていると注腸検査や大腸ファイバーなどはできず、CTなどから推測し緊急手術に踏みきらざるをえないときもあります。

進行度(病期)

大腸がんも胃がんと同様、がんの大きさではなく浸潤の程度、リンパ節転移の範囲、遠隔転移の有無などにより進行度(病期・ステージ)が決められています。大腸がんはリンパ節への転移とともに血行性転移しやすい性質を持っており、肝や肺に遠隔転移するとその予後は極端に悪くなります。

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大腸がんの治療方法

がんがポリープ状で粘膜だけにある時は、通常内視鏡的切除を行います。比較的早期のがんでは、症例により腹腔鏡下手術を行います。これはお腹に穴をあけて腹腔鏡というカメラを入れて行いますが、体への負担が少なく術後1週ほどで退院できます。一部の早期がんと大部分の進行がんは開腹による大腸切除が必要です。

がんの部位や病期により切除範囲(図2)、リンパ節郭清の範囲などが変わってきます。結腸がんでは少々長く結腸を切除しても日常生活にほとんど支障ありませんが、直腸がんでは少し異なります。直腸周囲の膀胱・前立腺・子宮・卵巣などは、排尿、排便、性機能など重要な機能をもち、骨盤内に張りめぐらされた自律神経によって支配されています。

がんの進行度によってこの神経を温存する自律神経温存術から犠牲にする方法までさまざまな手術法があります。肛門に近い下部直腸や肛門にできた進行がんには、肛門まで切除してお腹に人工肛門(ストマといいます)をつける直腸切除術を行います。

抗がん剤の使用について

進行がんの術後再発予防のため抗がん剤が使われますが、十分な効果があるかどうか分かりません。現在その有効性について臨床研究されているところです。進行・再発などのため手術できなかった場合には、多種類の抗がん剤を投与することもあります。

入院期間

結腸がんは約3週間、下部直腸がんは約5週間の入院を要します。S字状結腸や直腸は便から水を再吸収しますので、同部位切除により術後下痢など便通異常をきたしますが、通常2ヶ月くらいで安定します。

人工肛門の場合には袋(パウチといいます)をつけて便の処理をしますが、皆さんが想像されるほど日常生活の制限はないようです。費用は、結腸がんで120万円、下部直腸がんで180万円ほどです。このうち患者さんのご負担は、加入健康保険の負担率に応じた金額となります。